【2026年施行】OEMへの「値上げ無視」が違法に!化粧品事業者が直面する新法(取適法)の落とし穴
様々な物価が高騰している昨今、化粧品の製造に必要な原材料や容器代も大きく値上がりしています。
OEM工場から「原材料費が上がったので単価を上げたい」と言われたとき、「うちは予算が決まっているから無理」「他社に変えるよ」と、話し合いもせずに断っていませんか?
実はその対応、2026年1月から施行される新法(通称:取適法)では「違法」とみなされ、最悪の場合、社名が公表される可能性があります。
これまでビジネスの現場で「当たり前の対応」だと思っていた行為が、なぜこれからはリスクになるのか。化粧品メーカーと工場の「正しい交渉プロセス」を行政書士が解説します。
新ルール最大の落とし穴!「協議しない」だけでアウト?
今回の法改正(通称:取適法/中小受託取引適正化法)で、化粧品事業者が最も注意すべきなのが、「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」という新ルールです。
これまでは「最終的に価格が決まればいい(安く買えればいい)」という風潮がありましたが、これからは「協議のプロセス」自体が重要視されます。
「安く買うこと」ではなく「無視すること」が違法
新法では、OEM工場などの中小事業者から「コスト上昇(労務費、原材料費、エネルギー費)」を理由にした値上げ要請があった場合、以下の行為が禁止されます。
【禁止行為】(改正法 第4条)
中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は必要な説明等をせず、一方的に代金の額を決定すること。
つまり、工場からのSOSを無視して「うちはこの値段でしか買わない」と門前払いしたり、協議の申し入れを無視し続けたりすることが、「買いたたき」や「協議義務違反」として規制対象になるのです。
「値上げしない=違法」ではありません
ここで誤解してはいけないのが、「必ず値上げに応じなければならないわけではない」という点です。
重要なのは結果ではなく、「誠実に協議のテーブルに着いたか」です。
工場から提出された根拠資料を元に話し合い、お互いが納得すれば「価格据え置き(値上げなし)」という結論になっても、法的には全く問題ありません。
※単純な日程調整の遅れが直ちに違法になるわけではありませんが、協議を延期する際は「〇月〇日頃に回答します」と実施時期の目安を提示するのが無難です。
なぜ「社名公表」が化粧品ブランドにとって致命傷なのか
この法律のペナルティには「罰金」だけでなく、是正勧告を受けた企業の「社名公表」があります。
化粧品ブランドにとって、これは倒産リスクに等しい致命傷となりえます。
1. 女性消費者は「エシカル(倫理)」に敏感
化粧品ビジネスにおいて、ブランドイメージは命です。しかし、ブランドイメージは華やかなパッケージや広告だけで作られるものではありません。
消費者庁や民間シンクタンクの調査によると、「エシカル消費(倫理的消費)」への関心は男性よりも女性の方が高いというデータがあります。
今の女性消費者は、商品の品質だけでなく「その企業が社会的に正しいことをしているか(サステナビリティ、公平性)」を厳しく見ています。「下請けいじめ」というレッテルは、あなたのブランドのコアファンを一瞬で敵に回す行為です。
2. 社名公表による実際の炎上事例
記憶に新しいのが、某国民的スイーツブランドの事例です。
「安くて美味しい」と大人気だった同社ですが、下請け業者からの納品を不当に拒否したり、値下げを強要したりしていたとして、公取委から勧告を受け、社名が公表されました。
このニュースが出た瞬間、SNSでは「好きだったのに幻滅した」「下請けいじめで作った安さだったのか」と批判が殺到し、不買運動を示唆する声も上がりました。
このリスクは、スイーツ業界以上にイメージ重視の化粧品業界にとって深刻です。
SNSでの炎上だけでなく、百貨店やバラエティショップなどの小売店から「コンプライアンス違反」を理由に取引停止を告げられる可能性も十分にあります。
コンプライアンスを守ることは、法律のためだけでなく、「ブランド(=売上)」を守るための最大の防衛策なのです。
あなたの会社は大丈夫?緊急チェックリスト
2026年の施行に向け、今のうちに直近の取引状況を振り返ってみましょう。
- ✔
支払いサイトは適正か?
工場への支払いは納品から60日以内になっていますか?(※新法では手形払いは原則禁止となります) - ✔
メールの履歴に「無視」はないか?
値上げ要請を無視したり、「検討しません」と一方的に拒否した履歴はありませんか? - ✔
契約書は古くないか?
「発注者が一方的に単価を決定できる」といった、古い商慣習に基づいた条項が残っていませんか?
まとめ:安さよりも「対等な関係」がブランドを守る
2026年施行の取適法では、「値上げに応じるかどうか」ではなく「どう誠実に対応したか」が問われます。
- OEMからの値上げ要請への返信文
- 製造委託契約書の内容
- 価格交渉に関する社内ルール
これらは、化粧品製造販売業者にとって許可や広告チェックと同じくらい重要な“法務リスク”です。
「安く作る」ことよりも「工場と対等に適正取引をする」ことが、長く愛されるブランドの条件になります。
すずらん行政書士事務所では、化粧品製造販売業許可の取得支援とあわせて、OEM対応・広告表現・契約周りを含めた実務相談を承っています。
「工場との契約書や、メールでのやり取りに不安がある」
「この対応で問題ないか確認したい」
そのような方は、まずはスポット相談からでも構いません。
あなたのブランドが『ブラック認定』される前に、ぜひ一度行政書士にご相談ください。

